パチンコ店の会社分割と風営法

2014年12月15日 10:45

パチンコ店の会社分割と風営法

 

1.はじめに  

   パチンコ店営業の一部を会社分割する場合、あらかじめ当該会社分割について風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下、「風営法」といいます。)施行規則で定める手続きにより、当該営業所を管轄する都道府県公安委員会(以下、「公安委員会」といいます。)の承認(以下「分割承認」といいます。)を受けたときは分割会社の名義で得ていた当該営業所についての風営法3条の営業許可(以下「営業許可」といいます。)を、新設会社〈新設分割の場合〉ないしは承継会社〈吸収分割の場合〉に承継することが可能です〈風営法7条の3、以下、「営業許可の承継」といいます。〉。

 

2.営業許可の承継のメリット

  そしてこのような営業許可の承継は新設会社ないしは承継会社において、新たに営業許可を取得する場合と比べて、次のようなメリットがあります。

〈1〉風営法4条3項の準用がない。

まず、分割承認に際しては、営業許可の基準を定める風営法4条2項の準用がありません。〈風営法7条の3は、同法4条1項だけを準用しており、同条2項を準用していません。〉よって大阪府公安委員会の分割承認を例に取れば、風営法4条2項をその運用の前提とする風営法施行令6条及び大阪府風営法施行条例2条1項2号〈学校や病院の周囲100メートル内のパチンコ店に対する営業許可の禁止等を規定〉等の適用もありません。そのため、営業許可の承継によれば、会社分割時に当該分割の対象となるパチンコ店の周囲に学校等の保護対象施設が存在したとしても、新設会社ないしは承継会社において、当該パチンコ店の営業を継続することが法律上も許されることになります。

〈2〉手続きが簡略である。

また、営業許可の承継の方が

① 手間がかかからないこと〈営業許可申請書の記載事項は複雑、「遊技機が認定を受けたものであることを称する書類」等営業許可承継では不要である添付書類が営業許可申請では必要等〉

② 申請手数料が低廉であること(証紙代12,000円)

③ 分割承認の審理期間の短いこと(約35日)

④ 分割承認申請期間中の分割会社での遊技台の入れ替えが可能

   等の点で、新たに営業を取得し直す手続きよりもメリットがあるといえます。

 

3.営業許可の承継の手続きについて

  営業許可の承継の手続きは、

① 新設分割の場合、会社分割前の営業許可名義人が営業所所在地の所轄警察署長を経由して、公安委員会に対して、分割承認の申請をし〈吸収分割の場合は、分割後の名義承継人との連名で申請する〉、

② 公安委員会による分割承認が下り、

③ 会社分割の登記をし、〈分割会社は会社分割による変更登記をし、新設会社は会社分割による設立登記をし、承継会社は会社分割による変更登記をする。〉

④ 新設会社ないしは承継会社において、分割会社の有する営業許可証を公安委員会に提出し、営業許可名義人を分割会社から新設会社ないしは承継会社へと変更する内容の書換えを受ける

  という流れになります。〈風営法7条の3、同系2の5項、風営法施行規則1条2項、13条の3、15条〉。


  

このうち特に注意を要するのは③を②の前にしてはならないということです。

③を②の前にしてしまうと、その時点で、分割会社名義の営業許可は失効し、公安委員会の承認による営業許可の承継ができなくなってしまいます。〈風営法等の解釈運用基準第14の1の(4)〉。

 4.補足

 なお、本件の会社分割に際しては、分割会社の債権者等から異議等が出ないように、会社分割に際して発行する全株式を分割会社に割り当てる物的分割の形を取り、かつ新設会社ないしは承継会社において分割の対象となる店舗の従業員の労働債務及び機械等の設備に関するリース債務等を包括承継し、金融機関に対する債務については、当該債務を担保する抵当不動産の時価の範囲で重畳的債務引受をすることをお勧めします。